コタツで温まりながら、沢山の話をした。
例えば年末年始の過ごし方。俺の家族は皆、泊まりがけで親戚のところへ行っている。自分はお年玉を貰うより、横内と初詣に出かけるのを優先してしまった。
同情した、きーさんが口を開く。
「俺たちと遭遇したせいで、お参りが台無しになっちゃったね」
「本当ですよ。相良さん、空気読んでほしい」
吐き捨てるように言うと、笑い声が弾けた。
「陸君って結構、はっきり主張するなあ」
「多分、横内の影響です。考えなしに本音をぶつけてくるから、移ったのかも」
「あー、確かに彼はいつも、まっすぐだから」
きーさんは、眩しそうに目を細めた。いつまでも、ブラックコーヒーに拘る俺には到底できない表情だ。
どうすれば、もっと余裕を持てるだろう。悔しい気持ちを消せるだろう。
彼に聞いてみたくて、けれど口にしづらい疑問は増えていった。正月、帰省しない事情や。長続きさせる気もない恋人ゴッコに、付き合ってくれる理由。
きーさんは彼氏ができると毎回、初めにルールを作るのだそうだ。
「例えば体の浮気はアリか、ナシか」
「大抵のカップルは、駄目なんですよね」
「俺はいつも、禁止しないでおく。そうすれば、されても裏切られた気にならなくて済むだろ?」
彼は、少し面倒な人だ。本当は自分だけ見てほしかったと、顔に書いてある。
正直、あまり共感できなかった。
「俺はするつもりないですけど、アリにしておきましょうか」
そもそも何故、恋愛とセックスを一緒くたに、考える必要があるのだろう。
俺はそれぞれで、性欲を処理したかった。もし自分で自分を慰めるのが難しいなら、同じ目的を持った人とするべきだ。
「心の浮気も、構わないですよ。どうせ嫉妬したくたって、できませんから」
「……なんていうか。陸君とは、気を張らずに付き合えそうだよ」
日が沈む頃になって、駅まで送ると、きーさんは言ってくれた。
玄関から出た瞬間、彼は俺の手の甲に、手の甲をくっつけてくる。顔を上げると、意味深な笑みを浮かべ、離れた。
同性と付き合うなら、人目を気にする必要がある。
性的な意味合いで、誰かと密着するのが苦手な自分にとっては、ありがたかった。けれど、きーさんには窮屈な世界なのかもしれない。
本音は、どうなんだろう。
気になりながらも結局、俺はまた口をつぐんでいた。